僕は絶望的に恋愛に向いていないのかも知れない。
僕の通っている大学は、理系単科大学ということもあってか、女子学生が非常に少ない。
そのため(かどうかは知りませんけど)、何かキッカケがないことには、女性と関わらない。
恋愛対象は女性、彼女いない歴イコール年齢、の僕からすれば、これは由々しき事態だ。
人間だもの。さすがに彼女の一人や二人、出来たっていいじゃない。
思えばこれは今に始まったことじゃない。僕の人生は一貫して恋愛要素ゼロだ。
小学校では、恋心は下心という共通認識が蔓延っていて、誰かに恋なんてしようモンなら、イジメのターゲットにされるような環境だった。なので恋愛はダサいものと思っていた。
その影響もあってか、中学高校と共学だったにも関わらず、色恋沙汰を一度もくぐり抜けて来なかった。
浪人生となってから、中学高校時代の友人達は次々とリア充デビューしている、というウワサが、嫌でも流れてきた。大学に入ったら流石に一歩踏み出すぞ、そう思っていた。
そんな矢先だった。
最後の模試を終え、2度目のセンター試験を目前に控えた年末のある日、両親の口からとんでもない言葉が飛び出した。
「私たち、離婚することにした。」
耳を疑った。何も考えられなくなった。というか考えたくなかった。どんな顔をすればいいか分からなかった。
「実は10年ほど前からお互いに不満が蓄積していた」
「ソレが爆発したので今回こういう結論に至った」
「二人の問題だからこっちで解決する、だからあんたは受験に集中して」
イヤイヤイヤ無理でしょ。
せめて春まで待ってよ。
(後日談だが、最終的に親権者となった母曰く、「春まで待っていたら学費の支払いをどうするかでもっと面倒なことになると思った。」とのこと。)
一通り胸の内を吐露しあった後、空気が重過ぎて、うなだれた頭を上げられなかった。
その後一週間ほど、上の空で過ごしたのは言うまでもない。
父が家から出ていった後、将来の自分に彼女が出来たとして、上手くやっていく自信は完全に喪失していた。
何故なら、僕は幼いころから
「お父さんそっくりだね!」
と言われて育ってきたからだ。親戚の集まりでは、これを言われない日はなかった。
だから、お前は異性に好かれない、といった旨のことを言われても、父が結婚出来たのだから大丈夫、と信じて心の支えにしてきた。そんな父が、20年近く共に過ごした女性に拒絶されたのだ。
それだけでなく、自分の両親は、愛してくれた人を切り捨て、愛した人を幻滅させる人たちである、という事実を叩きつけられたのだ。
また、自分のルーツである親の一方が、もう一方を否定する、というのは、間接的にではあるが、親から人格否定を受けたも同然だ。これはかなり精神に効いた。悪い意味で。
この気持ち、経験者にしか分かるまい。
何とか大学に滑り込んだ後、二十歳になって、他大学に通う旧友との飲み会に参加すれば、開口一番、女性との交際の有無を問われる。
親のことは出来れば言いたくなかったので、周りに女性がいない、と答えてみせた。
無慈悲にも、そんな言い訳するなよ!ゼロじゃねーだろ!と返される。
これで頭にきた。
こっちの事情も知らないで、何を聞いてんのじゃお前。こちとら彼女出来る自信を失ったんだぞ。
そう吐き捨てて両親の離婚を告白。
質問は止み、慰めの酒を奢ってもらった。
でも、空気を濁してしまった。
そのあと、昔話を蒸し返して笑って、飲んで、近況報告で盛り上がって、飲んで、何とか場を持ち直した。
おさけの ちからって すげー!
そして迎えた2度目の飲み会。
心の傷も時間が幾らか癒してくれていた。出会いさえあれば彼女欲しいと思える程までに。
再び交際相手の有無を確認されても、現実で無理そうだから画面の中で探してる、と冗談を言ったら意外とウケた。探してないけど。
そこでマッチングアプリを使うことを提案されて、数日後に実際にインストールしてみた。
しばらく使ってみて、ある女性とマッチが成立した。
お互い学生で、同い年だったこともあり、会話は弾んで、いい感じになれそうに思えた。自分の大学を明かすまでは。
大 学 名 を 告 げ た と た ん 、
そ の マ ッ チ は 解 除 さ れ た の だ 。
もしかしたら、こちらのトークスキルの欠如や、プロフィール欄に「都内の理系の国立大生」と曖昧に書いたこと(相手に東大生とか東工大生だと期待させてしまった、とか。)とかが理由かも知れない。
でも、ここまでの紆余曲折を何とかくぐり抜けて、やっとの思いで、自らの力で掴み取ったことですら否定された、と解釈してしまう自分。超虚しい。凄く虚しい。
学歴コンプ再燃。
滅びろ学歴社会。
もう笑うしかない。
はいはい草生える草生える。
あははははははははははっ、はははははははははははははwwwwwwwwwwwwww。アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、アハハハハハハハハハハハッハハハハハハハハハハハハハハハハハwww
ゲホゲホッ、オエッ。
ふぅ。
このように、新たなライフステージに差し掛かる度に、恋愛から遠ざかるようなイベントが発生する僕も、今年で21歳である。彼女は未だいない。
これじゃ魔法使いコースまっしぐらだよ。
I need somebody to love.